森山ビレッジ
5世帯の施主による集落づくり。地域の森林資源とデジタルファブリケーションを活用することで、秋田の伝統的民家の風景を再解釈し、コミュニティ参加型で5棟を建築した。また、住民出資の組合で融資を受けて運営する住宅所有のあり方を提示し、コモンズとしての住宅金融スキームを開発。里山との新たな共生モデルを実践する取り組みである。
近年、2拠点・多拠点居住をはじめ多様な住まい方が生まれている。複数の拠点を保有しようとした際に課題となるのが、住宅所有の方法である。このプロジェクトでは、5組の施主が共同出資で組合を作り、その組合に地方銀行から融資を受けることでこの問題を解決した。組合によって土地と建物を共同保有することで、個人に直接紐づかない住宅所有のあり方が実現した。空いている時には宿泊施設として貸し出され、関係人口としてのデジタル村民の受け皿となりつつ、その収益を活かして住宅環境を向上させ続けていく。このように、コモンズとしての開かれた家づくり・集落づくりのあり方を提示した。また、本エリアでは2年連続で豪雨災害が発生し、クマによる人的被害も頻出している。里山との新たな共生の形は全国的な課題でもあり、半径30km圏内の森林資源を、デジタル技術とコミュニティの共助を活かして循環させていくモデルを提示することを目指した。
半径30km圏内の里山の杉を使い、切り出しから製材、加工、組立までを完結させた。加工は、近隣のCNC加工機3台で分散加工を行った。建築様式は、秋田の伝統的民家である中門造りを現代的に再解釈し、深い庇をもったL字平面となっている。5組の施主各自が独自の間取りや内装をデザインしており、耐震性を備えた構造部材をユニット化することで、住まい手も参加できる工法とした。施工には地域の子どもたちを含め、コミュニティ参加型の住まいづくりを行った。内部は柱のない大空間となっているため、住まい方の変化によっても空間を改変することもできる。住まい方としては、土地や建物を組合が建設・所有することで、日常的に住むことも、二拠点居住することも、一時的にレンタルすることもできる。将来的に利用権を受け渡す仕組みも含めて設計することで、ライフスタイルに応じた多様な住まい方が育まれていく、開かれたコミュニティの場を創出した。
プロジェクト情報
所在地 |
秋田県南秋田郡五城目町小池字森山下89番地7 森山ビレッジ |
構造 |
・主体構造/構法:木造軸組工法、・基礎:べた基礎 |
敷地面積 |
1,719.99㎡ |
建築面積 |
294.51㎡(建蔽率17.13%) |
延床面積 |
334.55㎡(1階:243.46㎡、2階:91.09㎡、容積率19.46%) |
受賞歴 |
グッドデザイン賞2024・グッドデザイン・ベスト100受賞 |