珈空暈
"世界的に著名なバリスタから茶室をつくりたいと依頼を受けた。厳密には茶における茶室のように、珈琲における亭主と客の共創空間としたいというものだった。この場を訪れた客の個性や気分に応じて、厳選した豆を即興的にブレンドし至高の1杯を届ける。この1杯の体験価値を最大化し、バリスタという職能を一変させてしまうようなゲームチェンジャーとしての建築が求められた。
まず始めに、正方形のスケルトンをリノベーションするのではなく、空間の中心に方丈の庵を配置する計画を提案した。こうすると、ただのスケルトンが対話すべき新たな自然に思えてくる。試しに矩形を45度振ってみると4つの隅が生まれ、そこに待合・床・水屋・躙口を配置することで室内を庭園化することにした。ただ、庵を自立させたことで内装制限を受け、不燃木を使わざるを得なくなったため、コストや加工性を考慮して高圧木毛セメント板を構造に採用することになった。
次に矩形の空間に置かれた庵の面を取ることに着手した。3次元的に面を取るとシェルになるが、この曲率をセメント板で形成するために、曲面を六角形で離散的に充填することになった。試しにパネル同士を頂点で繋いでみると、接合部が茶釜の「あられ」に見えてきた。それならばと、試しにパネルを「虫食い」にして抜いてみると、非対称性が強調されるだけでなく、窓が生じ内部に間接光が入ってきた。また鉄器にあやかり板を黒く塗ってみたが、3次元的な面取りの影響か待庵の室床のような空間的広がりを感じた。次第にセメント板が竹小舞のように思えてきたため、この上に鉄粉と木粉を塗り込んだ錆びる塗料を塗りこみ、土壁の表情に近似させた。
"
プロジェクト情報
所在地 |
東京都 |
用途 |
カフェ |
構造 |
木質パネル工法 |
延床面積 |
32.34㎡(対象部分) |
設計 |
VUILD株式会社 |
構造設計 |
yasuhirokaneda STRUCTURE (金田泰裕/) |
照明 |
TILe(岩壁泰良) |
施工 |
VUILD株式会社 株式会社ルーヴィス" |
写真(1,5,6,8) |
Hayato Kurobe |
写真(2,3,4,7,9) |
Gottingham |