仁淀川スタッドハウス
林野率89%を誇る高知県仁淀川町は、林業の活性化のために移住者の受け入れに力を入れて
いる。毎年多くの人が、林業を学びに移住しにくるほど人気を博しているが、その受け皿として町営住宅の整備を行うことになった。その際、仁淀川町が進める原木流通のサプライチェーンの出口として、広く県内外に商流を展開することを目指し、町内で多く生産される板材を活用したプロトタイプを開発することが目指された。
このような経緯から地域の板材を活用することが設計上求められ、すべての部材を板材だけで建築することに挑戦した。具体的には、仁淀川町内の製材所で多く生産されている30×105mmの間柱材を活用した。通常この材はCLTに加工されるラミナ材として県外に出荷されてしまうが、大型工場で接着してでき上がるCLT造への批判的実践として、合板などの接着剤を利用した面材を一切使用しない構造体を提案した。
町内に設置された小型切削機ShopBotを利用するため、部材長を3m以下と設定し、トラスや
重ね柱など2本以上の材をボルトで組み合わせて使用することで各部材を構成している。こうすることで将来的な分解や移築を容易にするだけでなく、誰でも建設可能な工法を目指している。
また、製材や乾燥、ShopBotでの加工、施工といったすべてのサプライチェーンを町内で完結させることができ、輸送コストや中間マージン、CO2排出量を削減すると同時に、町内の林業及び木材産業の活性化・経済循環に貢献することができる。この工法が提示している未来像は、地産地消の家づくりのあり方だけでなく、木を伐り、その手で建築も建ててしまう新しい林業(家)のあり方だ。
プロジェクト情報
所在地 |
高知県吾川郡仁淀川町 |
主体構造・構法 |
木造軸組工法 |
基礎 |
べた基礎 |
階数 |
地上1階 |
所在地 |
東京都港区 |
敷地面積 |
392.69㎡ |
建築面積 |
66.35㎡(建蔽率16.89%) |
延床面積 |
49.68㎡(容積率12.65%) |
所在地 |
東京都港区 |
受賞歴 |
グッドデザイン賞2024 |
写真(竣工) |
Tomoyuki Kusunose |