NESTING直島
オフグリッドの高性能住宅をセルフビルドで建てるプロジェクトである。建主は、東京で働きながら縁のあった直島で旅館業を営む。この住宅は建主の2拠点目の家として住みつつ、旅館業で地域経済を回すために宿としても貸し出している。2023年5月にセルフビルドで建てる住宅の1棟目の建主を募集するNOTE記事を公開し、50組以上の応募者の中から選定した。プロジェクトでは、建設の各プロセスにおいてセルフビルドで建てられる工法の開発にチャレンジした。
基礎はスパイクフレーム工法と呼ばれる単管打ち込み式の杭基礎を採用し、2日で基礎工事が完了した。構造材は30mm厚のスギ材をShopbot(CNC加工機)で加工し、工場で組み立てた柱梁で構成した。板材を組み合わせて構造材を構成することで、最も重い部材でも20kg以下と数人でもつことができ、クレーンなどの重機を使用せずに建て方を行った。上記のようなプロセスを経て、着工から竣工まで約1.5ヶ月の工期で竣工させることに成功した。
壁の耐力要素は筋交いとし、外壁は工場生産で気密・断熱機能をもたせたカーテンウォールを構造体の外側から取り付けた。屋根板金もユニット化し、内装は天井をパネル化するなど、熟練技能や専門の工具がなくても施工できる納まりを追求すると同時に、現場作業を省力化することで2カ月という短工期を実現した。断熱性能はUA値=0.44[W/m2K]でHEAT20、G2基準をクリアし、高気密高断熱住宅をセルフビルドで実現、消費エネルギーを抑えている。天井裏の空調ボックス内に設置した2台の家庭用エアコンで建物全体を冷暖房する計画とした。南側の屋根一面に発電容量8.16kWの太陽光パネルを設置し、年間推定発電量は 9,300kWhと電気的にもオフグリッドを実現した。