学ぶ、学び舎
"次世代の学びを探求するプロジェクトとして建設された教育インキュベーション施設である。CLTを型枠にした鉄筋コンクリート造を構造とする。CNC加工された葉脈状梁やパネルをコンクリートの型枠として使用し、仕上げを兼ねた「打ち込み型枠」として残す。これを主要構造体として機能させ、建築として使用した前例のない構造物である。曲面の幾何学的なアルゴリズムによりCADモデルを自動生成し、それを補助線として5軸CNC加工のCAMのパスを作成し、自社で木製型枠を切削する、という通常の意匠設計および構造設計の枠を超えたシステムを構築した。建物内にはこの型枠を加工したCNC加工機が設置され、先端製造技術を誰でも体験することができる開放的な施設として活用される予定であり、 必要な空間や場を、利用者が都度拡張していくというオープンエンドな建築となっている。そのため、初期条件として大屋根と機械だけがある状態から始まる。
⚫︎デザインプロセス
設計の課題として、次世代の新しい公教育を実装する場としての役割を持たせつつ、完成形のない、拡張可能な空間としての開放的な空間を作り出すというものがあった。また、学習材となりうる「教材として」のエクストリームでエクスペリメンタルな建築が求められた。そこで5軸CNC加工機による3次元切削を用いた大スパンの空間を作り出すとした。最大240㎜厚のCLTパネルから切り出せることを条件とし、全体形状と切り出しの都合の間でシミュレーションを繰り返し、最適化の試行錯誤が重ねられた。場所によっては単純化を用い、あくまで施工を念頭に置いたデザインプロセスとなっている。
⚫︎ユニット工法+残存型枠
CLT梁は長手断面をサインカーブ状の曲線にし,その振幅の位相を短手方向にずらしていくことで,強いシェルをつくるという方法を探索していった。形状としては、度重なるスタディの末、自然界に見られる葉脈に倣った屋根形状になった。ジグザクに断面を構成することでシェルのデプスをつくり,そのジグザク断面の位相を3層にずらしていくことで強度を持たせた。 これにCLTのパネルを3次元的に自社工場でユニット切削し、現場で梁に接合、パネル同士は短冊金物でつなげた。そこにコンクリートを流し、葉脈上の梁と葉脈間を覆うスラブという構造体へと発展させた。そして木梁のスパン25m、コンクリートスラブの厚さ8cmという薄さを実現している。この建築工法は特開2021-042568として特許申請されており、汎用性の高い工法として通常のシェル工法の6割のコストに収めることができた。"
プロジェクト情報
所在地 |
東京都小金井市貫井北町4-1-1 |
用途 |
集会所兼木工所 |
構造 |
RC造 |
敷地面積 |
297471.22㎡ |
建築面積 |
251.28㎡ |
延床面積 |
295.90㎡ |
建築設計 |
VUILD(担当/秋吉浩気 中澤宏行 篠原岳 伊勢坊健太 高野和哉(元所員)) |
生産設計アドバイス |
ヴィック(担当/渡辺 健児 石原隆裕) |
構造設計 |
佐藤淳構造設計事務所(担当/佐藤淳 本田幾久世(元所員) 末廣康介 下田悠太) |
環境設備 |
Arup(担当/菅健太郎 大江晴天(元所員) 土井豊希) |
照明 |
TILe(担当/岩壁泰良) |
監理 |
VUILD(担当/秋吉浩気 中澤宏行 篠原岳 伊勢坊健太) |
施工 |
アトリエ海 (担当/佐々木君吉 田中岳(鉄建建設より出向)) |
木材加工 |
VUILD ( 担当/花田康史 小西陽二 野田慎治) |
電気 |
電気 大東電設(担当/片岡雅生) |
写真(竣工) |
Takumi Ota |