弟子屈のタワーサウナ
北海道・弟子屈町「THE RETREAT 弟子屈」にて、VUILDは塔のように立ち上がる小さなサウナの設計・施工を行った。限られた敷地の中で、熱効率と快適性、そして豊かな空間体験を両立させるため、私たちは“積み重ねる”という発想を出発点に空間を構想した。
建物は、曲線を描くモジュールを積層することでかたちづくられています。外観・内観ともに有機的なフォルムが印象的で、まるでレゴブロックのようにヒノキ材のパーツが積み重なる。これらの部材はすべて5軸CNCマシンによって三次元的に加工され、設計から製作・施工までを一貫してデジタルファブリケーションで行った。プレファブリケーションされた各ブロックは、現地で一つひとつ積み重ねられ、複雑な自由曲面を現実の建築として立ち上げている。
内部空間は、熱が上階へと自然に上昇する空気の流れを活かすことを考慮し設計。らせん状に配置された階段に沿って、高さの異なるヒノキブロックを配置することで、構造材・仕上げ材・座面としての機能を一体化。利用者はその動線をめぐることで、温度帯に応じた自分の居場所を見つけることができる。空気の流れや室温は、エントランスや上部に設けられたスリット窓の開閉によって柔軟に調整が可能にしている。
階段中央の柱には、照明デザイナーとの協働によって間接照明を仕込んだ。壁面上部から落ちるやわらかな光が、空間に静けさと奥行きをもたらし、他者とともにいながらも孤独を味わえる、瞑想的な体験を提案する。
建物全体は非対称のフォルムを持ち、用いられているヒノキブロックは一つとして同じ形がない。設計段階では、建物全体のバランスと形状に合わせて各部材のサイズや組み立て方法を何度も検討。古代建築のような積層構法を参照しつつ、それを現代のデジタル技術によって再構築した。
各ブロックには立体的な溝が刻まれており、水平方向・垂直方向にビスで固定することで、ズレを防ぐ「ほぞ」のような役割を果たしています。構造と仕上げ、そして使い方が一体となったヒノキの部材は、空間の中で静かにその存在を主張し、限られたフットプリントの中で縦方向の空間を最大限に活かす構造となっている。
プロジェクト情報
所在地 |
北海道川上郡弟子屈町 |
用途 |
サウナ施設 |
竣工 |
2022年11月 |
延床面積 |
23.16㎡ |
設計 |
VUILD |
施工 |
VUILD |
照明計画 |
TILe |
木部5軸加工 |
VUILD+Artistry |
構造設計 |
金田泰裕/yasuhirokaneda STRUCTURE |
写真(竣工) |
Hayato Kurobe |