NESTING能登羽咋
2024年1月1日の能登半島地震とその後の豪雨災害により、多くの住まいが失われた。被災地では、解体やインフラ復旧の遅れ、職人・建築資材の不足などにより、住宅再建の長期化が課題となっている。こうした状況を前に、セルフビルドとデジタルファブリケーション技術を活用し、「被災者自身が仲間と共に家をつくる」という新たな再建手法を提案するプロジェクトが「NESTING羽咋」である。
本プロジェクトの中核となるのは、VUILDが開発したセルフビルドキット「NESTING」。コンストラクションマネージャーであり石川を拠点に活動する建築家、BEYONDの田中順也氏の指導のもと、被災者自身が友人やボランティアと共に延べ40日間、実に150名ものボランティアが参加し、力を合わせて家を建てるプロセスを実現した。
多雪地域向けに強化した「能登モデル」は、2mの積雪に耐える構造とし、伝統的な能登の民家に見られる4.5寸勾配屋根や下見板張りの外壁を採用。さらに、解体された家からレスキューした棟木をShopBotで再加工し床材へ転用したり、昭和ガラスを再利用した建具を造作するなど、住まいの記憶を継承し新たな暮らしへと繋げることも重視した。
震災から時間が経つにつれ、報道が減り被災地への関心が薄れていく。しかし、本当に問題なのは「伝えられないこと」だけでなく、「関わる場が見つけにくいこと」なのかもしれない。現地に行きたくても何をすればよいか分からないという状況が、関心の希薄化を加速させているのではないだろうか。
建築プロセスをオープンにし、被災者だけでなく全国からの支援者やボランティアが関わることで、共につくり、学び、関係性を築く場としてこのプロジェクトに参加することができる。被災者と支援者が出会い、関わり続けるための「余白」こそが災害復興において、未来を共に築いていくきっかけを生み出していく。150名ものボランティアの参加は、まさにこの「余白」を求める声が反映された結果である。
支援する・されるの関係から「共につくる復興」へ。小規模なコミュニティハウスや仮設住宅のモデルとしても応用できる可能性、持続可能な建築手法として、災害時の即応性を高めると共に、平時においても地域社会のレジリエンス向上に貢献する住まいづくりの選択肢として提案していきたい。
プロジェクト情報
| 設計 |
施主家族 |
| 設計サポート |
VUILD |
| コンストラクションマネージャー(施工支援) |
BEYOND田中順也 |
| 構造 |
yasuhirokaneda STRUCTURE(金田泰裕) |
| 施工 |
154名のコビルドクルー |
| 竣工写真 |
Kenya Chiba |
| 施工写真 |
VUILD |
| その他 |
図面の一部に「CAD素材.com」のデータを使用しております |